Dum loquimur, fugerit invida aetas. Carpe diem, quam minimum credula postero.
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♥ 理想と現実
ニュースでスキンヘッドのおっさんが道を掃除している姿を延々映していたので一体何なんだろうと思ってよくよく見てみたら、ボーイ・ジョージでした。
なんでも、コカイン所持で逮捕され、罰として5日間の社会奉仕活動をしているところなんだとか。なんかもう、普通の掃除のおっちゃんでしたよ。作業着がよく似合っていた。
コカイン所持の罰が道路掃除っていうのもなんだか不思議な気がしますが、まぁ、それはともかく、あのう、サッカー界でも最近いましたよね、3日間の社会奉仕活動を命じられた方が。思わず作業着を着た彼がほうきと塵取り持って一生懸命道路掃除をしている姿を想像してちょっと萌えてしまいましたよ。
いいなぁ、見てみたいなぁ。凄く可愛いと思うんだよなぁ。パリのメトロなんてポイ捨てされた切符が散乱してるから掃除のし甲斐もあると思うし。
あ、念のため申し添えておきますが、私は彼の大ファンです。ホントに。
掃除と言えば、源三さんは散らかし大魔王のような気がするけどどうだろう。
「君はどうして使ったものをあちこち放り出して歩くわけ!?」とか毎度岬君に怒られてそうです。岬君はきっちりしてそう、っていうか、もともと散らかすほど物持ってなさそうだよな。
岬君が家事万能なのであまり出る幕がなさそうですが、実は源三さんも結構働き者であって欲しいと思うのは、彼にちょっと夢を見過ぎでしょうか。
休むことなくフィールドを走り回り獅子奮迅の働きを見せるネドヴェドが家では全く何もせず、電球を替えて欲しいと奥さんに頼まれて、「僕はサッカー選手だよ。電気屋じゃない」と答えたというのは有名な話ですが、源三さんと岬君は共働きなわけですし、家事は手分けしてやって貰いたいものですね。てか、電球くらい替えてやれよ、ネドヴェド!
何にせよ、試合の後はどう考えても岬君の方が体力消耗してるんだから皿洗いとか風呂掃除とかお前が率先してやってやれよな源三、とちらりと思ったりもしたのですが、考えてみればこの二人が会えるのは基本試合がない時で、代表合宿の時は別に皿洗いも風呂掃除もする必要ないんだよなー。
オフの日は、ふたりで和気あいあいと楽しんで家事をやってたりするのかなー。
「僕、ご飯の支度してるから、君はお風呂洗ってきてくれる?」
「OK、まかせとけ」
そう答えていそいそとバスルームへ向う源三さん。鼻歌交じりにてきぱきと浴槽を掃除した後、食事が出来るまでにはまだ時間があるだろうし、ついでに鏡や壁のタイルも磨いておくか!とあちこちツルツルピカピカに磨いちゃったりするわけですが、その間、かつてお風呂場で起こった色々思い出してみたり、あらぬ妄想に耽ってニヤ付いてみたりするのは、まぁご愛嬌。
で、四方八方すっきり綺麗にした後再びキッチンに戻り、
「みさきー、終わったぞ」
「あ、ありがとう。お疲れ様」
「どういたしまして。・・・お、いい匂い」
岬君の腰にさりげなく腕を回し、ぐつぐつ煮える鍋の中を覗きこんで、旨そうだ、と相好を崩す源三さん。それに横顔で微笑む岬君。
「もうちょっとだから待ってて」
「あぁ。・・・何か手伝うことあるか?」
「んー・・・ じゃあ、むこうのテーブル拭いてお皿とか運んでおいてくれる?」
「了解♪」
と、岬君の頬にキスを一つ残し、源三さんたら布巾片手にうきうきとリビングに向ったりなんかしちゃったりして・・・
・・・っつーかな、やってられるかよこんなの!(手元のタオルを床に叩きつけつつ)
ふざけてるよこの二人!男同士の共同生活ってのはママゴトじゃないんだよ!もっとシビアなもんなんだよ!もっともっと暑苦しいもんなんだよ!
とか思いながらも、この二人に関してはなんだかこれが普通のような気がしてくる辺りがちょっと忌々しい。
ので、今回はいつもとは趣向を変えて、もうちょい殺伐とした源岬を書いてみましたよ。
なんでも、コカイン所持で逮捕され、罰として5日間の社会奉仕活動をしているところなんだとか。なんかもう、普通の掃除のおっちゃんでしたよ。作業着がよく似合っていた。
コカイン所持の罰が道路掃除っていうのもなんだか不思議な気がしますが、まぁ、それはともかく、あのう、サッカー界でも最近いましたよね、3日間の社会奉仕活動を命じられた方が。思わず作業着を着た彼がほうきと塵取り持って一生懸命道路掃除をしている姿を想像してちょっと萌えてしまいましたよ。
いいなぁ、見てみたいなぁ。凄く可愛いと思うんだよなぁ。パリのメトロなんてポイ捨てされた切符が散乱してるから掃除のし甲斐もあると思うし。
あ、念のため申し添えておきますが、私は彼の大ファンです。ホントに。
掃除と言えば、源三さんは散らかし大魔王のような気がするけどどうだろう。
「君はどうして使ったものをあちこち放り出して歩くわけ!?」とか毎度岬君に怒られてそうです。岬君はきっちりしてそう、っていうか、もともと散らかすほど物持ってなさそうだよな。
岬君が家事万能なのであまり出る幕がなさそうですが、実は源三さんも結構働き者であって欲しいと思うのは、彼にちょっと夢を見過ぎでしょうか。
休むことなくフィールドを走り回り獅子奮迅の働きを見せるネドヴェドが家では全く何もせず、電球を替えて欲しいと奥さんに頼まれて、「僕はサッカー選手だよ。電気屋じゃない」と答えたというのは有名な話ですが、源三さんと岬君は共働きなわけですし、家事は手分けしてやって貰いたいものですね。てか、電球くらい替えてやれよ、ネドヴェド!
何にせよ、試合の後はどう考えても岬君の方が体力消耗してるんだから皿洗いとか風呂掃除とかお前が率先してやってやれよな源三、とちらりと思ったりもしたのですが、考えてみればこの二人が会えるのは基本試合がない時で、代表合宿の時は別に皿洗いも風呂掃除もする必要ないんだよなー。
オフの日は、ふたりで和気あいあいと楽しんで家事をやってたりするのかなー。
「僕、ご飯の支度してるから、君はお風呂洗ってきてくれる?」
「OK、まかせとけ」
そう答えていそいそとバスルームへ向う源三さん。鼻歌交じりにてきぱきと浴槽を掃除した後、食事が出来るまでにはまだ時間があるだろうし、ついでに鏡や壁のタイルも磨いておくか!とあちこちツルツルピカピカに磨いちゃったりするわけですが、その間、かつてお風呂場で起こった色々思い出してみたり、あらぬ妄想に耽ってニヤ付いてみたりするのは、まぁご愛嬌。
で、四方八方すっきり綺麗にした後再びキッチンに戻り、
「みさきー、終わったぞ」
「あ、ありがとう。お疲れ様」
「どういたしまして。・・・お、いい匂い」
岬君の腰にさりげなく腕を回し、ぐつぐつ煮える鍋の中を覗きこんで、旨そうだ、と相好を崩す源三さん。それに横顔で微笑む岬君。
「もうちょっとだから待ってて」
「あぁ。・・・何か手伝うことあるか?」
「んー・・・ じゃあ、むこうのテーブル拭いてお皿とか運んでおいてくれる?」
「了解♪」
と、岬君の頬にキスを一つ残し、源三さんたら布巾片手にうきうきとリビングに向ったりなんかしちゃったりして・・・
・・・っつーかな、やってられるかよこんなの!(手元のタオルを床に叩きつけつつ)
ふざけてるよこの二人!男同士の共同生活ってのはママゴトじゃないんだよ!もっとシビアなもんなんだよ!もっともっと暑苦しいもんなんだよ!
とか思いながらも、この二人に関してはなんだかこれが普通のような気がしてくる辺りがちょっと忌々しい。
ので、今回はいつもとは趣向を変えて、もうちょい殺伐とした源岬を書いてみましたよ。
「なぁ、岬」
「なに?」
「腹減らないか?」
「んー?そうだね、お腹減ったね」
若林の問いに、ソファでサッカー雑誌を読んでいた岬は軽く頷いて答えた。
「そろそろ夕飯の時間だしね。外も暗くなってきたみたいだし」
「あぁ。晩飯の時間だよな」
「うん」
こくりと岬が頷いて、再び沈黙が落ちる。頷いて同意するばかりで何もアクションを起こそうとしない岬君に、若林は促すような声音で再び声を掛けた。
「岬、腹減った」
「僕もお腹減った」
「だったらそろそろ夕飯の支度した方が・・・」
「うん。若林君、頼むね」
結論付けるようにそう言って、岬は澄ました顔で雑誌を読み続けている。
岬に夕食の準備をするよう促したつもりだったが、思いもかけずその言葉の矛先がブーメランのように我が身へ返ってきて、若林は思わず眉を顰めた。
「・・・は?俺が?」
「そう。君が」
「どうして」
まるで酷く理不尽な事を言われたかのような表情でそう問い返す若林に、岬がようやく雑誌から顔を上げる。
そして、「あのさ」と溜息と共に吐き出して息を整え、一見穏やかな、しかしその実一言一言刺すような調子で続けた。
「昨日の夕飯作ったの僕だったよね。パリから飛行機に乗ってここに着いて早々、休む間もなく夕食の支度をしたのはこの僕でした。ついでに言えば、今朝、君が気持ち良さそうにぐーぐー寝ている間に朝ごはんの用意したのも僕。今日のお昼を作ったのも僕。今晩は君が作ってくれても罰は当たらないんじゃない?」
畳み掛けるように言われては反論も出来ず、というよりも、岬の言ってることは逐一もっともなのでそもそも反論の余地などあろう筈はなく、若林は暫し押し黙った後、諦めたように溜息を一つ吐いてのろのろと床から立ち上がった。流石に分が悪過ぎる。
「・・・分かったよ。作りゃいいんだろ、作りゃ。その代わり大したもん出来ないからな」
男の料理にありがちで、材料をふんだんに買い込み、豪勢なもてなし料理を作るとなれば決してその腕自体は悪くない若林だが、有り合せのもので適当に作るという能力には少々欠けているのが難点だ。
「スパゲッティでも茹でるか・・・ 具になるようなもん、なんかあったっけな・・・」
冷蔵庫の中に何かしら入っているだろうが、ピンとくるようなメニューはこれと言って思い浮かばない。
それでもまぁ、パスタ類ならなんとかなるだろうと算段をしつつキッチンへ向おうとした若林の背に岬の声が掛かった。
「スパゲッティ、固めでお願いね。あと、まずはお皿洗わなくちゃね。結構溜まってるよ」
「・・・皿?」
「そ。昨日の夕飯も今日の昼も片付けしてないだろ。お皿とかコップとか、流しに突っ込んでそのまんま」
「なんでそんなことになってるんだよ」
岬の言葉に歩みを止め、若林は憤然とした面持ちで振り返った。だが岬はそんな若林の様子はどこ吹く風といった風情で膝の上の雑誌を捲り続けている。
「なんでって、片付けてないからでしょ」
「だから、なんで片付けてないんだよ」
「それはこっちの台詞だよ。ご飯作らなかった方が皿洗いするって約束だろ?つまりあれは君の仕事」
「・・・あー・・・」
言われてみれば二人の間でそういう取り決めが出来ているのは確かで、若林は少々答えに詰まった。
「・・・でもあれだろ、今日は俺がメシ作るんだから、あの皿はお前が・・・」
「あれは今日のお昼までの分の洗い物。だから君のノルマ。今晩君が夕食を作るんだったら後片付けは僕がするよ、もちろん」
「でもな・・・」
「大体ね、言わせて貰えば、昨日の夕飯作る時だって前の分の食器が沢山溜まってて、その片付けから僕は始めたんだけど」
今まではなんだかんだ言いつつも結局なし崩し的に岬が全てをやってくれていたのだが、どうやら今回は意を決して一切手を出さないことに決めたらしい。
確かに岬にばかり負担を掛けるのは若林としても本意ではなかったが、今から食器の山と向かい合うのはいかにも面倒臭い。
「仕方ねぇな・・・。じゃ、外に食いに行くか」
新たな、そして少々問題回避的な提案を出した若林に、だが、岬は実に冷静に尋ねてくる。
「お皿いつ洗うの」
「それは・・・ 明日でいいだろ、別に」
「明日ね・・・ ふーん・・・」
雑誌から視線を外し、岬は若林を見上げた。いささか皮肉な色を帯びたその表情に込められた言葉は明らかだったが、若林は分からない振りを決め込むことにした。
「なんだよ」
「別に」
「・・・それよりどうするんだ。外に食いに行くのか、行かないのか?」
「うーん・・・」
わざわざ外に出かけるのも面倒だなぁ、という顔で暫し考えた後、それでも岬は自分の腹具合と相談しつつ結局は現実的な結論に至ったようで、
「OK。じゃ、ちょっとシャワー浴びてくる」
と言うと、雑誌を傍らに置いて立ち上がった。
「出かける前に君も入った方がいいよ。夕べは結局入らないで寝ちゃっただろ?面倒臭いとか言って」
そう言われてくんくんと我が身を嗅いでみれば、確かに少々汗臭いし肌がべたつくような気がする。
「あぁ、そうだな・・・」
別に高級レストランに行こうという訳ではないが、外に出るからにはさっと汗を流しておいた方がいいだろう。若林はそう納得して頷き、そして次の瞬間、ハタと思い当たった。
「・・・あ」
「ん?何?どうかした?」
「ダメだ。外食は取り消し」
「なんで?」
バスルームへと向いかけていた岬は、若林のいきなりの前言撤回に少々驚いたような顔で振り向いて目を瞬かせた。
「なんか問題があるの?」
「パンツがない」
「・・・はぁ?」
「替えのパンツがないんだよ。ここんとこ洗濯してなかったから。今履いてるのがラストの1枚」
その言葉に岬はまじまじと5秒程恋人の顔を見詰めた。そして、言われてみれば確かに洗面所の一角に大量の洗濯物が渦巻いていたな、と思い当たったらしい。
「・・・あのさ、どれくらいの間洗濯してなかったの?」
岬が呆れたような溜息交じりにそう尋ねる。
「えーと・・・ 2週間・・・ いや、もう3週間になるか・・・」
「・・・君んとこの洗濯機、確か全自動だったよね。スイッチ押すだけで後は機械が全部やってくれるんだよね。乾燥機だって付いてるよね」
「あ・・・ いや、ここのところ忙しくてな・・・」
説得力のかけらもない若林のその言葉に、岬は何か言いたげに口を開きかけたが、すぐに思い直したように軽く息を吐いて若林に告げた。
「・・・ま、今から洗濯したってどの道遅いしさ、もういいじゃない、パンツくらい。どうせジーンズ穿くんだし、外からは分からないよ。下着付けない人だって結構いるしさ」
「嫌なんだよ」
「何が嫌なんだよ」
「なんか落ち着かないんだよノーパンは。スースーするし、ゴワゴワするし」
「3週間も洗濯しないような図太い神経してるくせに、なんでそんなところだけ繊細なんだよ!」
「あの、良かったらお前の貸して・・・」
「入るわけないだろ、馬鹿」
「・・・だよな。うん」
はははははと空しい笑いを上げた後、若林はがくりと項垂れ、そしておずおずといった感じで上目遣いに岬に尋ねた。
「・・・・・・ピザでも取るか?」
「もうなんでもいいよ。いい加減ホントにお腹減って苛々してきた」
流石の岬も堪忍袋の緒が切れ掛かっているようで、ソファにどさりと深く体を埋めると、全く、と一つ大きな溜息を吐く。
「じゃ、ピザな。あ、ほら、サラダとかも付けてさ。お前、野菜欲しいだろ?」
数々の失態で失われた信用と名誉を取り戻し、なんとか岬の機嫌を上向けようと若林は必死の笑顔で続けた。
「この間頼んだんだけど、結構旨かったぞ。配達も早いから30分も待たずに済むしな。・・・あ、飲み物はビールでいいか?えーと、確かその辺にピザ屋のチラシが・・・」
と突然、明るさを装っていた若林の声が、「あ・・・」という困惑の音を最後にふと途切れる。苛々を納めようと軽く瞑っていた瞼を再び開き、岬は若林に声を掛けた。
「・・・今度は、何?」
「いや、チラシ、あの中にあるはずなんだけどな・・・」
そう言って若林が指差した先には、大量の新聞、雑誌、書籍、折込広告その他が渾然一体となった、紙の海とも山とも付かぬものが・・・
「なに?」
「腹減らないか?」
「んー?そうだね、お腹減ったね」
若林の問いに、ソファでサッカー雑誌を読んでいた岬は軽く頷いて答えた。
「そろそろ夕飯の時間だしね。外も暗くなってきたみたいだし」
「あぁ。晩飯の時間だよな」
「うん」
こくりと岬が頷いて、再び沈黙が落ちる。頷いて同意するばかりで何もアクションを起こそうとしない岬君に、若林は促すような声音で再び声を掛けた。
「岬、腹減った」
「僕もお腹減った」
「だったらそろそろ夕飯の支度した方が・・・」
「うん。若林君、頼むね」
結論付けるようにそう言って、岬は澄ました顔で雑誌を読み続けている。
岬に夕食の準備をするよう促したつもりだったが、思いもかけずその言葉の矛先がブーメランのように我が身へ返ってきて、若林は思わず眉を顰めた。
「・・・は?俺が?」
「そう。君が」
「どうして」
まるで酷く理不尽な事を言われたかのような表情でそう問い返す若林に、岬がようやく雑誌から顔を上げる。
そして、「あのさ」と溜息と共に吐き出して息を整え、一見穏やかな、しかしその実一言一言刺すような調子で続けた。
「昨日の夕飯作ったの僕だったよね。パリから飛行機に乗ってここに着いて早々、休む間もなく夕食の支度をしたのはこの僕でした。ついでに言えば、今朝、君が気持ち良さそうにぐーぐー寝ている間に朝ごはんの用意したのも僕。今日のお昼を作ったのも僕。今晩は君が作ってくれても罰は当たらないんじゃない?」
畳み掛けるように言われては反論も出来ず、というよりも、岬の言ってることは逐一もっともなのでそもそも反論の余地などあろう筈はなく、若林は暫し押し黙った後、諦めたように溜息を一つ吐いてのろのろと床から立ち上がった。流石に分が悪過ぎる。
「・・・分かったよ。作りゃいいんだろ、作りゃ。その代わり大したもん出来ないからな」
男の料理にありがちで、材料をふんだんに買い込み、豪勢なもてなし料理を作るとなれば決してその腕自体は悪くない若林だが、有り合せのもので適当に作るという能力には少々欠けているのが難点だ。
「スパゲッティでも茹でるか・・・ 具になるようなもん、なんかあったっけな・・・」
冷蔵庫の中に何かしら入っているだろうが、ピンとくるようなメニューはこれと言って思い浮かばない。
それでもまぁ、パスタ類ならなんとかなるだろうと算段をしつつキッチンへ向おうとした若林の背に岬の声が掛かった。
「スパゲッティ、固めでお願いね。あと、まずはお皿洗わなくちゃね。結構溜まってるよ」
「・・・皿?」
「そ。昨日の夕飯も今日の昼も片付けしてないだろ。お皿とかコップとか、流しに突っ込んでそのまんま」
「なんでそんなことになってるんだよ」
岬の言葉に歩みを止め、若林は憤然とした面持ちで振り返った。だが岬はそんな若林の様子はどこ吹く風といった風情で膝の上の雑誌を捲り続けている。
「なんでって、片付けてないからでしょ」
「だから、なんで片付けてないんだよ」
「それはこっちの台詞だよ。ご飯作らなかった方が皿洗いするって約束だろ?つまりあれは君の仕事」
「・・・あー・・・」
言われてみれば二人の間でそういう取り決めが出来ているのは確かで、若林は少々答えに詰まった。
「・・・でもあれだろ、今日は俺がメシ作るんだから、あの皿はお前が・・・」
「あれは今日のお昼までの分の洗い物。だから君のノルマ。今晩君が夕食を作るんだったら後片付けは僕がするよ、もちろん」
「でもな・・・」
「大体ね、言わせて貰えば、昨日の夕飯作る時だって前の分の食器が沢山溜まってて、その片付けから僕は始めたんだけど」
今まではなんだかんだ言いつつも結局なし崩し的に岬が全てをやってくれていたのだが、どうやら今回は意を決して一切手を出さないことに決めたらしい。
確かに岬にばかり負担を掛けるのは若林としても本意ではなかったが、今から食器の山と向かい合うのはいかにも面倒臭い。
「仕方ねぇな・・・。じゃ、外に食いに行くか」
新たな、そして少々問題回避的な提案を出した若林に、だが、岬は実に冷静に尋ねてくる。
「お皿いつ洗うの」
「それは・・・ 明日でいいだろ、別に」
「明日ね・・・ ふーん・・・」
雑誌から視線を外し、岬は若林を見上げた。いささか皮肉な色を帯びたその表情に込められた言葉は明らかだったが、若林は分からない振りを決め込むことにした。
「なんだよ」
「別に」
「・・・それよりどうするんだ。外に食いに行くのか、行かないのか?」
「うーん・・・」
わざわざ外に出かけるのも面倒だなぁ、という顔で暫し考えた後、それでも岬は自分の腹具合と相談しつつ結局は現実的な結論に至ったようで、
「OK。じゃ、ちょっとシャワー浴びてくる」
と言うと、雑誌を傍らに置いて立ち上がった。
「出かける前に君も入った方がいいよ。夕べは結局入らないで寝ちゃっただろ?面倒臭いとか言って」
そう言われてくんくんと我が身を嗅いでみれば、確かに少々汗臭いし肌がべたつくような気がする。
「あぁ、そうだな・・・」
別に高級レストランに行こうという訳ではないが、外に出るからにはさっと汗を流しておいた方がいいだろう。若林はそう納得して頷き、そして次の瞬間、ハタと思い当たった。
「・・・あ」
「ん?何?どうかした?」
「ダメだ。外食は取り消し」
「なんで?」
バスルームへと向いかけていた岬は、若林のいきなりの前言撤回に少々驚いたような顔で振り向いて目を瞬かせた。
「なんか問題があるの?」
「パンツがない」
「・・・はぁ?」
「替えのパンツがないんだよ。ここんとこ洗濯してなかったから。今履いてるのがラストの1枚」
その言葉に岬はまじまじと5秒程恋人の顔を見詰めた。そして、言われてみれば確かに洗面所の一角に大量の洗濯物が渦巻いていたな、と思い当たったらしい。
「・・・あのさ、どれくらいの間洗濯してなかったの?」
岬が呆れたような溜息交じりにそう尋ねる。
「えーと・・・ 2週間・・・ いや、もう3週間になるか・・・」
「・・・君んとこの洗濯機、確か全自動だったよね。スイッチ押すだけで後は機械が全部やってくれるんだよね。乾燥機だって付いてるよね」
「あ・・・ いや、ここのところ忙しくてな・・・」
説得力のかけらもない若林のその言葉に、岬は何か言いたげに口を開きかけたが、すぐに思い直したように軽く息を吐いて若林に告げた。
「・・・ま、今から洗濯したってどの道遅いしさ、もういいじゃない、パンツくらい。どうせジーンズ穿くんだし、外からは分からないよ。下着付けない人だって結構いるしさ」
「嫌なんだよ」
「何が嫌なんだよ」
「なんか落ち着かないんだよノーパンは。スースーするし、ゴワゴワするし」
「3週間も洗濯しないような図太い神経してるくせに、なんでそんなところだけ繊細なんだよ!」
「あの、良かったらお前の貸して・・・」
「入るわけないだろ、馬鹿」
「・・・だよな。うん」
はははははと空しい笑いを上げた後、若林はがくりと項垂れ、そしておずおずといった感じで上目遣いに岬に尋ねた。
「・・・・・・ピザでも取るか?」
「もうなんでもいいよ。いい加減ホントにお腹減って苛々してきた」
流石の岬も堪忍袋の緒が切れ掛かっているようで、ソファにどさりと深く体を埋めると、全く、と一つ大きな溜息を吐く。
「じゃ、ピザな。あ、ほら、サラダとかも付けてさ。お前、野菜欲しいだろ?」
数々の失態で失われた信用と名誉を取り戻し、なんとか岬の機嫌を上向けようと若林は必死の笑顔で続けた。
「この間頼んだんだけど、結構旨かったぞ。配達も早いから30分も待たずに済むしな。・・・あ、飲み物はビールでいいか?えーと、確かその辺にピザ屋のチラシが・・・」
と突然、明るさを装っていた若林の声が、「あ・・・」という困惑の音を最後にふと途切れる。苛々を納めようと軽く瞑っていた瞼を再び開き、岬は若林に声を掛けた。
「・・・今度は、何?」
「いや、チラシ、あの中にあるはずなんだけどな・・・」
そう言って若林が指差した先には、大量の新聞、雑誌、書籍、折込広告その他が渾然一体となった、紙の海とも山とも付かぬものが・・・
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